イケダリョウの日記

今年は頑張って更新していこうと思います

いつか行ってみたい国、モロッコについてのメモ | 大竹伸朗『カスバの男 モロッコ旅日記』

ロッコ北部タンジールから車で1時間のところにアシラという小さなビーチタウンがある。画家、大竹伸朗の『カスバの男 モロッコ旅日記』にはアシラの町について次のように記されている。

建物のほとんどは真っ白で床や壁にモザイク。白い路地の壁に見かける壁画が光に満ちて輝く。毎年、街が世界各地のアーティストをよび、滞在させ壁画を描かせるらしい。

あまり長くとどまることはできなかったが、もう少しゆっくりいて物を見、感じたかった場所だった。おそらくここではたくさんのものを見落とした気がしてならない。

本の中でアシラについて触れられているのはわずか2ページほどだ。そこはモロッコの他の都市に比べても穏やかな場所らしい。大竹さんもタンジールから日帰りで遊びに行っただけらしいが、小さな港町アシラには何か惹きつけるものがあるに違いない。僕も人生のどこかで行ってみたいと思った。

 

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「世界中旅行したけど、客引きが酷すぎて最悪の場所だった」。いつの日だったか、休暇を使ってモロッコに行きたいと考えていると話した知り合いから返ってきた言葉が、それだった。たしかに僕はモロッコに対して幻想を抱いているのかもしれない。どの旅行記事に描かれている彼の地のイメージはどれも鮮やかで、いかにも魅惑的であった。だから知り合いによる突然のモロッコ批難が始まったときはやはり怖気づいてしまったことは事実である。コロナの影響もあり、僕はいまだにモロッコには行けていない。

 

とはいえ、旅に綺麗事だけを求めるのは御門違いである。異国は楽園ではない。そこにはその土地独自のリアリティがただただ横たわっているだけなのだ。

本書には、モロッコに思わずいきたくなってしまうような、すてきなエピソードも美辞麗句もない。多くの人に親切にされたなんてこともないどころか、金、金、ガイド、ガイドとまとわりつく男たちの姿が、こちらもうんざりするぐらい出てくるし、モノクロ写真が映し出すのは、崩れたゴミ箱だったり、路上の割れた卵だったりする。少なくとも、モロッコってこの世の天国かも、なんて感想は抱かない。(解説:角田光代)

『カスバの男』に描かれるモロッコの情景はひたすらにリアルである。汚いことも、綺麗なこともありのまま。だからこそ余計に行きたくなってしまう、異国のもつ不可思議な引力を感じてならない。いつか彼の地に降り立ったとき僕は何を感じ、何を考えるのだろうか。